静岡県西部・中部地区でドラッグストアチェーンを展開する杏林堂薬局。
「ヘルス＆ビューティーの専門性」に加えて、食品・日用雑貨品などもメインカテゴリーとして展開する「総合生活者ストア」、さらに医療を軸とした「健康医療法人」として地域医療に貢献する企業を目指している。
近年では、高齢化や女性の社会進出に伴う買い物時間の減少に対応するため、生鮮・惣菜から医薬品まで、必要なものを1カ所で購入できる「ワンストップショッピング」を推進するほか、ECの活用によるオムニチャネル戦略も積極的に推進している。

そんな中、杏林堂薬局で課題として浮上していたのが、事業計画や販売戦略の立案に不可欠なデータ分析の効率化だった。ドラッグストア営業本部 マーケティング部 MD分析室 室長の池田 知洋氏は、「顧客ID付きPOSデータの分析サービスを利用して、ポイントカード会員の購入実績や世代などの属性をはじめ、各店舗や商品別の販売実績、購入日、粗利益など、さまざまな項目を軸に、データ分析やレポートの作成を行っていました。この分析サービスでは、CSV形式や項目が定型化されたExcelファイルで結果が出力されるのですが、より詳細な分析やレポートの作成にはExcelファイルを2次加工する必要がありました」と説明する。
求める分析結果を導き出すためには、複数のExcelのデータを組み合わせたり、何度か計算を繰り返した後に、グラフ化したり考察を加えていたりしていたため、レポートの作成に多くの手間と時間がかかっていたという。
「レポートの作成には、1人の担当者が3～4日ほどを要することもありました。また、月次の実績レポートだけでなく、新店舗立ち上げ直後の販売実績など、スポットでの作成依頼も寄せられます。そうしたことから、レポート作成の生産性向上とともに、よりビジネスに貢献できるような深い考察を加えた分析を行うためにも、データ分析業務の効率化が急務となっていたのです」（池田氏）
さらに池田氏は、「小売業、ドラッグストア業界の競争が激化する中、多岐にわたる部署内の各予算、プロジェクトを多角的に把握し判断することが求められていました。そのためにもExcelによるデータ抽出・加工・作成にかかる時間を短縮し、統一的なデータの可視化を行うことで、誰もが簡単に過去や現状把握、判断を迅速に行える環境の構築が不可欠でした」と続ける。

課題解決に向けて杏林堂薬局は、データ分析環境の刷新を決断。
各社のソリューションを詳細に検討した結果、最終的にパートナーとして選ばれたのが、「ZEUSCloud」を提案したジールだった。

ZEUSCloudは、ジール独自のクラウド型分析基盤サービスである。
SaaS型であるため、自社でインフラを用意する必要がなく、契約後すぐにデータベースを含めた分析環境を利用することができる。料金も月額費用で利用できるほか、システム運用もすべてジールが管理するので、分析業務に集中することが可能となる。分析基盤としても直感的な操作で多彩なデータ分析やレポート作成が可能で、より高度なデータ活用をすぐに行えるようになる。
ZEUSCloudを選択した理由について池田氏は、「クラウドサービスならサーバーやストレージなどの設備を自社で用意せずに済むので、導入コストや導入にかかる時間が抑えられるほか、当時別のプロジェクトに携わっていった情報システム部門の手を煩わせることなく、新たな分析基盤を構築・運用できると考えました。また、必要に応じてリソースを柔軟に拡張できるので、スモールスタートが可能なことも大きなポイントとなりました」と話す。

そしてジールの採用を後押ししたのは、小売業における豊富な知見と構築実績だった。
「ジールとすり合わせを続けていく中で、小売業に対する造詣の深さを実感できました。実際、サンプル画面も用意してもらったのですが、その内容も私たちが求めていたものが反映されたものであり、ジールであれば当社の要望を十分に叶えてくれると確信しました」（池田氏）

2019年9月、杏林堂薬局はジールの支援のもと、データ分析基盤の構築を進めた。
クラウドサービスであることに加えて、ジールの手厚いサポートや導入教育により、翌月にはZEUSCloudの本番運用を迎えることができた。

プロジェクトに参加したジールの横山 慧は、「ZEUSCloudでどのような分析が行えるようになるのか、杏林堂薬局様に具体的なイメージをつかんでもらえるよう、実際のデータを使ってデモを行いました。また、ジールが持つ小売業のナレッジを活用しながら、お客様の立場に立ってZEUSCloudのハンズオンに臨みました」と話す。
「1つ苦労した点はZEUSCloudへのデータ移行でした。元のデータ量が非常に多かったためアップロード時間がかかりエラーが発生することもありましたが、最終的に移行ツールの利用や、分析対象となるデータの選択について提案を行いながら、解決に導くことができました」（横山）

池田氏は、「今回、ZEUSCloudの導入検討から本番運用開始まで、わずか1～2カ月で実施することができました。クラウドサービスであったことから、ハードウェアの調達など、事前準備に時間をかけずに済んだこともありますが、ジールの手厚いサポートやこちらからの問い合わせに対して常に迅速なレスポンスを返してくれたことも大きな要因です」と評価する。

ZEUSCloudの導入効果について杏林堂薬局では、データの2次加工にかかるさまざまな工程が効率化されることで、工数を30％ほど減らせる見込みだという。
さらに池田氏は、「分析フォーマットの加工も柔軟に行えるようになったので、これまで実現が難しかった、より詳細な分析にも着手したいと考えています。その結果、さらにプラスアルファの価値をもたらすような分析にたどりつけると期待しています」と語る。
「今回、ジールとともにプロジェクトを進めていく過程で、当社もデータ分析に関するさまざまな知見を得ることができました。杏林堂薬局はお客様の生活を幅広くカバーする『総合生活者ストア』というコンセプトを掲げていますが、地域の医療拠点としても昨今の新型コロナ感染拡大を防止する店舗づくり、そして新生活における需要の掘り起こしにもZEUSCloudが活用できるのではないかと期待しています」（池田氏）