総合建設業として幅広い実績を持つ清水建設様では、DXによる組織の変革を実現すべくデータドリブン経営を重要なテーマに位置付けています。そこで、部門ごとにデータがサイロ化されて情報連携が十分に進んでいない現状を変えるため、データ仮想化ツール「Denodo(※)」の導入を決定。ジールがその支援を担当しました。

※企業が持つデータ資産をリアルタイムで統合し、全てのユーザーやアプリケーションが安全にどこからでもデータにアクセスできるようにすることで、企業の事業運営や開発活動に貢献するデータ仮想化ソリューションのこと。

プロジェクトメンバー

猪野 隆太
マルチクラウドデータプラットフォームユニット第二部
2018年入社
前職では独立系Sierでシステムエンジニアとして勤務し、客先に常駐して基幹システムのカスタマイズなどを担当。社内研修でBIツールを使用する機会があり、ビッグデータに関わる業務に携わりたいと感じてジールへ。清水建設様の案件を担当した際は、PMとしてプロジェクトの進捗管理や担当者との調整業務などを行った。
佐藤 葵
マルチクラウドデータプラットフォームユニット第二部
2019年入社
専門学校のシステムエンジニア科で学んだ知識を活かそうと、IT企業にプログラマー志望で入社。しかし、SDカードの検証などをメインで担当することに。システム開発に携わりたいと転職活動を進める中でBIの分野に興味を持ち、ジールへの入社を決めた。今回のプロジェクトでは主にDenodoに関連する作業全般を担当した。

プロジェクトの課題

サイロ化されたデータを、Denodo導入で有効活用

猪野 : プロジェクトが始まった経緯は、清水建設様がデータドリブン経営を推進される中で、部門ごとにデータがサイロ化されていて、情報の有効活用が進んでいないという課題をお持ちだったことがそもそもの発端でした。

佐藤 : そうですね。個人で管理するExcelファイルだったり、部署単位で持っているお金関係のデータであったり、そういったものを有効活用できればとのことでした。部門間の横のつながりがないと、必要な情報を欲しい時に見ることができません。そこで、Denodoを導入して有益なデータに誰もがアクセスできるようにすることがテーマでした。

猪野 : 清水建設様が希望されていたのは、リアルタイムにデータを参照でき、常に鮮度の高いデータにアクセスできるというDenodoの利点を生かした「データ品質の向上」でした。

佐藤 : 「データ利用の効率化」も大きなテーマでしたよね。Denodoはシステムごとに散在していたデータが集約・一元化される点がメリットですし、データカタログ機能によって、ユーザーが通常のマウス操作を行うだけで必要な情報にたどり着けるところも便利です。

猪野 : あとはセキュリティリスクの低減も課題の一つでしたよね。ユーザーにDBを直接参照させることなく、適切なアクセス権を付与した状態でデータを公開できるようにすることに加え、データアクセス権を集中管理することで、セキュリティレベルを一定に担保できるようにしたいというご要望でした。

プロジェクトの取り組み

Power BIと接続するシングルサインオンの設定に苦戦

猪野 : プロジェクトを進めるにあたり、まず取り組んだのがPoC(概念検証)です。お客様へのヒアリングを実施し、現状の課題を把握して分析するところからスタートしました。そこから、2ヶ月という短い期間の中で、どういった部分に注力して進めていくべきかという検証コンセプトを決め、それに沿ったシナリオを作っていきました。

佐藤 : その後は、効果測定で問題ないことが分った段階で本構築に入っていきました。運用方針や開発方針を検討し、ユーザー様と一緒に開発を進め、最終的なリリースへと繋げていきました。

猪野 : 最も苦労したのは、Denodoによるデータ統合環境とPower BIサービス間のSSO(シングルサインオン)の設定でしたよね。

佐藤 : そうですね。かなり大変でした。Denodoのマニュアルにも記載がなく、ジール内にも知見がなかったことから、Denodoを開発・提供するDenodo Technologies社と一緒に協力しながら設定をしていきました。結果的になんとか無事リリースできましたが、前例のない取り組みだけにトライ&エラーを繰り返しながら進めていった感じですね。

猪野 : Denodo だけでなく、Power BI側の仕様を確認しないといけないのが大変でしたよね。

佐藤 : ええ。Power BI側のセキュリティ要件がかなり厳しくて。どこがどの設定値になるのかといったことが分からず、本当にパズルのような状態でした。それでも根気強く作業を進め、最終的にお客様から喜んでいただけたのがうれしかったですね。

猪野 : メンバーのやり取りという点では、リモートワークになるため、基本的にTeamsのチャットで情報共有をしていましたよね。

佐藤 : 困ったらすぐに通話して解決できる環境でした。週1回の定例ミーティング以外にも、何かあればすぐにチャットするようにしていたので、Teamsのチャットはかなり盛り上がっていましたね。また、画面を共有しながらのオンライン会議も活用していました。

プロジェクトの成果

ジールにはない新たな知見を獲得でき、自己成長を実感

猪野 : やはり一番の成果は、Denodoを用いてデータを有効活用するための基盤を構築できたことです。あとはデータカタログ機能も大きい要素だと思います。ユーザーがどこにどういうデータがあるのかを一目で分かるようになりましたから。

佐藤 : あとは、Power BI側とシングルサインオンでつなぐことができ、これまで以上にレポートの出力などが早くできる点も気に入っていただいています。

猪野 : 2024年問題に向けての勤怠実績の管理にもDenodoを活用いただけているようで、清水建設様の事業に貢献できていると思うとうれしいですね。

佐藤 : プロジェクトを通じて、清水建設様が積極的に動いてくださり、Denodoを触りながら数多くの質問をいただけたのが印象的でした。これだけ深い部分まで細かく質問されるお客様ははじめてでしたね。私がお客様に行ったトレーニングでも、積極的に質問をしてくださいました。飲み込みも早く、気付いたら1人でDenodoを触っているような感じでした。清水建設様と伴走型でプロジェクトを進めていけたのがとても大きかったと思います。

猪野 : 私が打ち合わせをしていた時も、清水建設様のITリテラシーの高さに驚かされることが多かったように思います。基礎的な部分から説明するような場面はほとんどなく、清水建設様の方から「こういうことはできませんか?」とアイデアをいただくこともありました。

佐藤 : これまではDenodoだけの構築をすることが多かったのですが、清水建設様の案件を通じて、BIツールとの認証に関わる業務などを経験し、新たな知見を得られたのが大きかったですね。他のお客様とのプロジェクトにおいても役立つことが多いです。

猪野 : 私も佐藤さんと同様、これまでやってこなかった部分の知見が得られたのが一番良かったと感じています。清水建設様とは今でもやり取りが続いていますが、清水建設様の期待に応えるためにも、AIなどの先端技術の知識を身に付け、より幅広いコンサルティングができるように成長していきたいです。

佐藤 : Denodoの基本的なトレーニングだけでなく、より発展した高度なトレーニングも提供していければと思います。例えば、ユーザー数が増えた場合はどういう対応が必要なのか、修正や追加がしたい時はどうすればいいかなど、実際の運用に即したトレーニングなどを通じて、これまで以上に有効活用していただけるようにサポートしていきたいですね。