背景と課題
データに基づく意思決定を目指しデータ分析基盤の構築に着手
世界有数の総合エンジニアリング会社として、またオンリーワンの技術で産業ニーズに応える機能材製造会社として、2つの顔で世界を舞台に活躍する日揮グループ。
総合エンジニアリング事業では、1970年代よりコンピュータを活用した設計技術の確立や、プロジェクトマネジメントシステムの開発を進めるなど、積極的にITを活用してきた。
DX(デジタルトランスフォーメーション)により社会や産業が劇的に変化する中、日揮ホールディングスは、デジタル技術を活用した将来像とその実現に向けたロードマップを示す「ITグランドプラン2030」を策定し、取り組みを進めている。
このプランの柱の1つである、プロジェクトデジタルツインについて日揮ホールディングス グループ基盤DX部 データ分析基盤課 課長 北中 康弘氏はこう説明する。
「プロジェクトデジタルツインは、文字通りデジタルの中でプロジェクトを再現するものです。工期の進捗率が30%の場合はデジタルの中でも30%の進捗となります。現状把握とともに、工期完了の100%になるまでにどのくらいの時間とコストがかかるのかなど、将来予測ができることが大きな特長です」
同グループはDXを推進し、プロジェクトデジタルツインをはじめデータに基づく意思決定を目指す。2019年にデータドリブン経営の実現に向けて、グループ会社のデータを収集し活用していくデータ分析基盤構築プロジェクトがスタートした。
日揮ホールディングス株式会社 グループ基盤DX部 データ分析基盤課 課長
北中 康弘 氏
採用のポイント
セミナーでAzureによるデータ分析基盤に確信を抱く構築パートナーには技術力を評価してジールを選択
データ分析基盤構築プロジェクトのテーマは、アクセス権限などセキュリティを確保したうえで、ユーザがBIツールを使ってデータを自在に活用できる環境の実現だ。
Microsoft Azure(以下、Azure)上にデータ分析基盤を構築する理由について、北中氏は次のように語る。
「2016年に日揮グループとしてクラウドファースト戦略を立案する際に、複数のクラウドサービスを比較・検討し、プラットフォームとしてAzureを選択しました。当時、Microsoft 365(旧Office 365)導入プロジェクトが進んでおり、Azure Active Directoryの採用、既存のオンプレミス環境からデータをAzureに送受信する専用線サービス「ExpressRoute」の活用など、Azureを利用する環境が整ってきていたからです」
そして2019年9月、日本マイクロソフトとDWH・BI分野を牽引するジールが共催したAzureベースのデータ分析基盤に関するセミナーに出席した北中氏は、「私が思い描いていた構想がベストプラクティスであることを確信できました」と振り返る。
構築パートナーにジールを選択した理由についてもこう続ける。「日本マイクロソフトと話をする中で、ジールの名前はよく出ていました。また、私もDWHやBI分野に強いジールの存在は知っており、セミナーに参加し改めてジールの技術力と知見について認識したこともポイントとなりました」
導入のプロセス
構築支援からスキルトランスファーまでジールの技術力とサポート力を高く評価
日揮ホールディングス株式会社 グループ基盤DX部 データ分析基盤課 データサイエンティスト
喜多 陵 氏
同グループのデータ分析基盤は、クラウド ETL サービスのAzure Data Factoryを使ってオンプレミスの社内システムからデータを抽出、変換・加工し、Azure Data Lakeに格納、Azure SQL Database(以下、SQL Database)に蓄積・管理しBIツールのPower BIをはじめとする分析ツールでデータ分析や可視化を行う仕組みとなっている。
データ分析基盤構築プロジェクトでは、2020年2月から1カ月かけてトライアル検証を実施。
検証内容について日揮ホールディングス グループ基盤DX部 データ分析基盤課 データサイエンティスト 喜多 陵氏は次のように話す。
「内製化方針の妥当性を確認するため、今回使う予定のAzure上のサービスを組み合わせた環境をジールに構築していただき、私たちで簡単に開発や運用ができるのかどうかを確認しました」
トライアル検証後、内製化が可能と判断し本構築が動き出した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う社内対応で一時中断したが、2020年7月に構築は再開した。
「プロジェクトメンバーがAzureやDWH、BIなどに触れた経験が少ない中で、構築支援だけでなく内製化に向けたスキルトランスファーまで、ジールの高度な技術力ときめ細かいサポートはとてもありがたかったです」と北中氏は評価する。
プロジェクト推進・技術支援のポイント①
スキル不足のメンバーをジールが技術的にサポートし短期間構築を実現
「多岐にわたる技術的な質問に対し、ジールはとても丁寧に答えてくれました。また、私たちが伝えた要件に合わせて、ジールが自社のAzure上に環境を構築し、検証後にその環境を日揮の本番環境に移して微調整を行うアプローチをとりました。手戻りもほとんどなく構築期間の短縮につながりました」(喜多氏)
プロジェクト推進・技術支援のポイント②
ジールの提案によりパフォーマンスの問題を解決
「今回は、ユーザから要望の多かった、図面や文書などを管理する図書管理システムのデータ活用を対象としました。想定よりも桁が違うデータ件数を抽出することで生じたパフォーマンスの問題をジールの提案で解決できました」(北中氏)
そして、プロジェクトを担当したジールの増田 圭亮は次のように加える。「データマートを実現するためにSQL Databaseのビューで仮想的に実現しようとしていたものを、物理テーブルにデータを蓄積する方式に変更し参照する形に変えることでパフォーマンスを改善しました」
株式会社ジール ビジネスアナリティクスプラットフォームユニット シニアコンサルタント
増田 圭亮
プロジェクト推進・技術支援のポイント③
ジールが実用的なドキュメントを用意し内製化に大きな安心感
株式会社ジール ビジネスアナリティクスプラットフォームユニット シニアアソシエイト
志賀 美由希
「私たちが見てわかりやすいように、丁寧で実用的なドキュメントをご用意いただき、内製化において大きな安心感につながっています。また今後、新人スタッフが入ってきても運用の継続性を実現できます」(喜多氏)
また、Azure Data Factoryの開発スキルトランスファーについてジールの志賀 美由希は、「実際にお客様が一から開発することを想定しながら事前準備を行いました。当日は打ち合わせと同じようにリモートによる対応だったので、お客様に分かりやすく進められるか不安もありましたが、スキルトランスファーに向けた概要図や開発物の一覧なども事前に用意していたおかげで、スムーズに進めることができたと感じています。お客様にも開発手順や手法について理解していただけたのではないかと思います」と当時の様子を振り返る。
導入効果と今後の展望
データを蓄積し現状把握から予測へ
課題解決に向けてジールの技術支援に期待
2020年11月、同グループにおいてデータドリブン経営への道を拓くデータ分析基盤が先行リリースされた。第1弾となった図書管理システムのデータを活用したユーザの声について、喜多氏はこう話す。
「従来、ユーザ部門がデータ分析を行う場合、IT部門に依頼して提供を受けていたため時間がかかることがありました。今はセキュアな環境のもとで、ユーザ自身が必要な時に図書管理システムのデータを利用し可視化できます。『こういうものがほしかった』というユーザからの声もあがるほどです」
データ分析基盤は、部門横断でデータを活用し新たな価値を生み出すことに価値があると北中氏は話す。
「これから対象となるデータをどんどん増やしていきます。データ分析基盤が直面するさまざまな課題を解決するために、ジールには今後も良き相談相手であってほしいと思います」
今後の展望について北中氏はこう話す。
「現状把握のためのデータ蓄積とともに、AIなどを活用した高度分析やシミュレーションを行い、将来を予測していくことも重要なテーマとなります。ジールには、当グループのデータ活用の普及、高度化に合わせて技術支援をお願いたいと思っています」
高度な技術と知見を結集し持続可能な社会の実現に貢献する日揮グループ。ジールはデータ活用における技術支援を通じて同グループの取り組みを支援していく。
– 取材にご対応いただいた方 –
(写真左から)
日揮ホールディングス株式会社
グループ基盤DX部 データ分析基盤課 データサイエンティスト 喜多 陵氏
グループ基盤DX部 データ分析基盤課 課長 北中 康弘氏
株式会社ジール
ビジネスアナリティクスプラットフォームユニット シニアコンサルタント 増田 圭亮
ビジネスアナリティクスプラットフォームユニット サービスユニット シニアアソシエイト 志賀 美由希
※部署名・役職名は取材当時のものとなります