公開日:2025年6月30日

更新日:2025年6月30日

「DeepSeek(ディープシーク)」※とは、中国のAI企業が開発したオープンソースの高性能AIツールです。ほかのAIモデルと異なる独自の特徴・強みを持ち、その革新的な技術と優れたコストパフォーマンスで現在注目を集めています。

本記事では、DeepSeekの基本情報や注目されている理由、各モデルの性能やほかのAIとの違いを解説。また、使用するうえでの注意点や具体的な導入手順もご紹介します。ぜひ参考にしてください。

※表記の都合上「DeepSeek」に統一して記載いたします。

DeepSeekとは中国産のAIツール

DeepSeekとは、2023年に中国で設立されたAI企業、および同社が開発した大規模言語モデル(LLM)です。Mixture of Experts(MoE)やMulti-Token Prediction(MTP)などの最新のAI技術を採用し、高い性能でテキスト生成やデータ解析を行ないます。また、コストパフォーマンスの良さも特徴です。

また、オープンソースとしてMITライセンスのもと無料で提供され、開発者を含め幅広いユーザーが利用可能です。OpenAIのChatGPTやGoogleのGeminiなど他社の生成AIと同様に、テキスト生成やデータ解析のほか対話型AIなど多様な用途に対応。中小規模の企業や個人ユーザーでも最新技術を手軽に活用できます。

DeepSeekが注目されている理由

DeepSeekが注目されている理由は、高性能と低コストを両立した革新的なAIモデル開発にあります。従来の高性能GPUを用いずに高度なAIモデルを構築したことが大きな話題となり、リソース効率の新たな可能性を示しました。

これらの特徴から、DeepSeekはグローバル市場において存在感を高めており、特に中小企業や新興市場においてAI導入のハードルを下げる大きな要因にもなっています。

DeepSeek 各モデルの特徴

エンジニアのイメージ

DeepSeekの現在使用可能な主要モデルは、「DeepSeek-R1」とその前身モデル「DeepSeek-V3」です。

DeepSeek-V3は、6,710億のパラメータ数を有し、Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャの採用によって、推論時のメモリ使用量を削減しつつ高精度な処理を実現。さらに、14.8兆トークンにおよぶ多様なデータで事前学習されており、数学やプログラミング、多言語タスクにおいて卓越した性能を発揮します。

一方、DeepSeek-R1は2025年1月にリリースされたモデルです。DeepSeek-V3をベースにしつつ推論能力が強化されており、複雑な問題解決や専門的なタスクに優れた設計となっています。

DeepSeek-R1 DeepSeek-V3
  • 複雑な推論や問題解決に特化
  • 強化学習(RL)を活用し、推論能力を強化
  • 数学、プログラミング、長文コンテキストに対応したデータセット
  • 文脈理解やニュアンスを深くとらえる能力
  • 幅広いタスクに対応
  • Multi-head Latent AttentionとMoEを採用し、効率的な処理を実現
  • メモリ効率を向上させつつ、高速な処理が可能
  • 多言語データやコーディングタスクに最適化されたデータセット

DeepSeekとほかの生成AI(Chatgpt等)ができることの違いを比較

AIのイメージ

生成AI市場にはさまざまなモデルが存在しますが、DeepSeekとほかの生成AIでは具体的にどのような点が異なるのでしょうか。性能やコスト、独自性などの観点から違いをみていきましょう。

オープンソース戦略

DeepSeekはソースコードがオープンソース(MITライセンス)で公開されており、モデルはオープンウェイトとして自由に利用可能です。このアプローチにより、開発者や企業はモデルを自由にカスタマイズし、独自のニーズに合わせて改良することが可能です。また、ローカル環境での実行も許可されており、セキュリティ対策や機能追加も容易に行なえます。

一方、OpenAIのGPTシリーズやGoogleのGeminiなどはクローズドソースであり、アルゴリズムなどへのアクセスが制限されています。透明性や柔軟性という観点ではDeepSeekに分がありますが、高い信頼性と安定した性能を提供できる点はクローズドソースのメリットです。

コストパフォーマンス

DeepSeekはChatGPTと同等の性能を持ちながら、低コストで利用できるコストパフォーマンスの高さが大きな魅力です。主要モデルは無料で提供されており、中小企業や個人ユーザーも最新技術を気軽に導入することができます。

また、高効率なトレーニング手法によって、高品質な出力を最小限の計算資源で実現している点も特徴です。この効率的な設計は、電力消費や運用コストの削減にも寄与し、AI導入コストを抑えたい新興企業やスタートアップにとって非常に魅力的な選択肢となっています。

言語対応と専門分野

DeepSeekは中国語の処理能力に優れ、それに伴い中国語圏のユーザーに強みを持っています。一方、ChatGPTは英語を中心に日本語でも高精度な対応が可能ですが、中国語はDeepSeekほど最適化されていません。

このような違いから、それぞれのモデルは用途による柔軟な使い分けが求められます。例えば、中国国内向けの商品説明や論文作成にはDeepSeekが適している一方、多言語対応が求められるグローバルなプロジェクトではChatGPTが有利でしょう。

倫理観

DeepSeekは、中国政府の規制に準拠する形で、センシティブな質問への応答に制限がある可能性が指摘されています。

一方、ChatGPTはOpenAIのガイドラインに基づき、幅広いトピックに対応可能ですが、安全性と倫理性を確保するために特定の質問には回答を控える場合があります。

どちらのAIも一長一短があり、ユーザーはそれぞれの特性を理解したうえで、目的に応じて適切に活用する必要があります。

比較項目 中国語に最適化 ChatGPT(GPT-4)
言語対応
  • 数学・論理的推論
  • プログラミング支援
  • 自然な文章生成
  • 言語サポート
料金体系 無料(オープンソース)もしくは有料API 月額課金制(無料プランあり)もしくは有料API
倫理観 センシティブな質問への応答に制限がある可能性あり OpenAIに準拠した回答を生成。幅広いトピックに対応可能だが、安全性と倫理性を確保するために特定の質問には回答を控える場合も

DeepSeekを使用する際の注意点

セキュリティのイメージ

DeepSeekを利用する際には、中国発のAIであることや技術的な制約に起因するリスクを十分に理解しておくことが重要です。ここでは、DeepSeekを安全かつ効果的に活用するために、利用者が押さえておくべきポイントを解説します。

ライセンス条項を確認する

DeepSeekはMITライセンスを採用しており、商用利用を含めて比較的自由に使用できる点が特徴です。MITライセンスでは、ソースコードの改変や派生モデルの作成、再配布も認められています。ただし、商用利用する場合は元の著作権表示とMITライセンスの文面を明記する必要があるため、利用前に必ずライセンス条項を確認しましょう。

これらの条件を理解しないまま利用すると、意図せずライセンス違反となる可能性があります。特に企業利用では法務部門と連携し、適切な運用体制を整えることが重要です。

出力内容の正誤に注意する

DeepSeekは高性能なAIモデルですが、必ずしも正確な情報を生成しているわけではありません。そのため出力内容の正誤に注意が必要です。また、前述したように、センシティブな話題では回答を回避する傾向があります。一部の情報生成では特定の視点が欠落し、不完全または偏った内容が出力されるリスクもあります。

これらの点から、重要な意思決定や専門的な作業に使用する場合は、人間による十分な検証が不可欠です。AI出力をそのまま採用せず、あくまで補助ツールとして活用するようにしましょう。

プライバシー・データ管理を徹底する

DeepSeekを使用する際には、データが中国国内のサーバーに保存されることにともなうプライバシーリスクに注意が必要です。入力データは中国の法律に基づき管理されており、政府機関がアクセス権限を持っています。アカウント削除後もデータを保持される可能性があり、機密情報や個人情報を扱う場合は注意が必須です。

特に医療や金融データといった高度なプライバシー保護が求められる分野では慎重な運用が求められます。また、ユーザーは利用前にプラットフォームの設定やプライバシーポリシーを確認し、安全性を確保したうえで利用することが重要です。

法的リスクの特殊性を認識する

DeepSeekは中国発のAIであるため、規約などは中国の法律に準拠しています。よって、トラブル発生時には中国での裁判管轄が適用される可能性があります。また、中国国内の規制変更や突然の利用規約改定による影響も考慮しておかなければなりません。リスク管理を怠ると、予期せぬトラブルにつながる可能性があります。

これらの法的リスクの特殊性に対応するためには、事前に専門家と相談しながら運用計画を立てることが重要です。著作権侵害訴訟やデータ流出などのリスクを回避するためにも、利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認し、安全に運用する体制を整えましょう。

DeepSeekの利用方法(使い方)を解説

DeepSeekは、Web、アプリ、API、ローカル環境などさまざまな方法で利用可能です。それぞれの手順や注意点を把握し、自分に合った方法で安全かつ効果的に活用しましょう。

Web版

Web版のDeepSeekは、公式サイトから簡単に利用できます。基本的な導入手順は以下のとおりです。

  1. DeepSeekの公式サイトにアクセスし、「Start Now」のボタンをクリック
  2. 「Sign Up」を選択し、メールアドレスとパスワードを入力、またはGoogleアカウントでログインすることも可能
  3. 送信されてくる確認メールに記載された認証コードを入力して登録を完了する
  4. ダッシュボードに表示された「チャットを開始」ボタンをクリック
  5. 入力欄に質問などを入力し、「送信」ボタンで実行

DeepSeekに限らず、これらのデータは管理国のサーバーに送られ保存される可能性があるため、個人情報や機密情報の入力は避けましょう。

また、生成された回答の正確性には限界があるため、人間による確認が必須です。

アプリ版

DeepSeekはスマートフォンのアプリを通じて利用することも可能です。インストールと使用手順は以下のとおりです。

  1. Apple StoreもしくはGoogle Playから「DeepSeek」を検索してインストール
  2. アプリを起動し、ログインボタンの下にある「サインアップ」をタップ
  3. メールアドレスとパスワードを入力し「コード送信」ボタンをタップ、またはGoogleアカウントでログインすることも可能
  4. 送信されてくる確認メールに記載された認証コードを入力して登録を完了する
  5. 入力欄に質問やリクエストを入力し、「送信」ボタンで実行

アプリ版では大量のデータ処理や長文生成時に、動作が不安定になったり、途中で文章が途切れたりすることがあります。また、バックグラウンドでの動作にはスマートフォンの性能が影響するため、高性能な端末で利用することをおすすめします。

API

開発者向けに提供されているDeepSeek APIは、以下の手順で利用可能です。

  1. DeepSeek公式サイトへアクセス
  2. トップページ右上にある「API Platform」タブを開き、アカウントを作成する
  3. ダッシュボードメニューにある「API Keys」をクリック
  4. 「Create new API key」をクリックし、APIキーの名前を入力
  5. 「Create API key」をクリックし、APIキーを取得
  6. 開発環境でAPIリクエストを実行

API利用は従量課金制のため、使用量の管理が必要です。また、APIキーが第三者に流出しないよう適切なセキュリティ対策を講じる必要があります。

ローカル環境

DeepSeekの一部のモデルはHugging Faceで公開されており、ローカル環境での利用が可能です。インターネットに接続することなくDeepSeekを実行できるため、高いプライバシー保護と低遅延を実現できます。

基本的なセットアップ手順は以下のとおりです。

  1. コマンドを入力し必要なPythonライブラリをインストールする
  2. Hugging Face公式サイトでアカウントを作成
  3. 「Account Settings」→「Access Tokens」でアクセストークンを生成
  4. DeepSeekモデルをダウンロードして読み込む
  5. モデルが正しく動作するかテストする
  6. ダウンロードしたモデルをローカルに保存して完了

ローカル環境では高性能なハードウェアが必要です。また、セットアップには技術的な知識が求められるため、初心者にはハードルが高い場合があります。

まとめ

DeepSeekはオープンソース提供であり、高性能かつ低コストで利用できる点が大きな魅力です。特に、「DeepSeek-R1」は、推論能力や処理速度の大幅な向上を実現させています。

その一方で、中国発のAIという特性上、プライバシーやデータセキュリティに関する懸念が指摘されており、そのリスクを十分に理解したうえで適切に使用することが重要です。安全性を確保しながら活用すれば、業務の効率化や技術革新に大きく貢献するツールとなるでしょう。

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