業務部門とともにデータ仮想化によるデータ活用<IT部門の新たな価値創造とは>

株式会社データ総研 コンサルティンググループ シニアコンサルタントマネージャ 藤生 尊史氏 株式会社データ総研 コンサルティンググループ シニアコンサルタントマネージャ 藤生 尊史氏
DX時代の競争で優位に立つためには、大量かつ多種多彩なデータのリアルタイム分析が求められる。しかし、DWHをはじめ物理的にデータを移動するこれまでの手法では、各所に散在する膨大なデータを収集して統合するのは限界がある。システムのデータはそのままに、データを仮想的に統合する「データ仮想化」は、DX時代のデータ活用に圧倒的なスピードと効率化をもたらす。またデータ活用に関するIT部門の負荷を軽減するのと同時に、その役割に変化をもたらす。「これからのIT部門には、業務部門とともにデータを活用し業務改善や新たなビジネスモデルを創造するなど、企業の継続的成長に直接関わることが求められる」と、データ総研 コンサルティンググループ シニアコンサルタントマネージャ 藤生 尊史 氏は指摘する。IT・システム部門の視点から、DX時代のデータ活用を実現するうえでのポイントや留意点について聞いた。

加速度的に増加するデータのうち約8割が構造化データ以外

DXを成功に導くために、IT部門が重視すべきポイントとは何でしょうか。

藤生:DXを推進するうえでIT部門が抱えるテーマとして、レガシーシステムの刷新はあくまでも入口に過ぎません。一丁目一番地は「DX時代のデータ活用」です。企業が扱うデータは、ERPやSCMなど基幹システムで利用される「構造化データ」と、社員の日常業務で生成されるExcelのデータ、CSVなどの区切り文字付きファイル、XML、JSON、Webサービス、センサーデータ(IoT)などの「半/非構造化データ」に大きく分けられます。DXの進展やグローバルビジネスの拡大により、加速度的に増加するデータのうち約8割は構造化データ以外といわれています。またモノからコトへ、ビジネスモデルの転換が求められる中、経営や業務部門では社内のデータとSNSや統計情報など社外のデータを組み合わせて、インサイト(気づき)を得たいといったニーズも高まっています。

構造化されていない膨大なデータをいかにスピーディに活用できるかは、DX時代の競争力における重要な要素です。しかし、多様化するデータを扱うツールやスキルのある人材をすぐに用意できるわけではありません。また一般的にDWHは、データ管理構造に詳しくないユーザがデータを探し当てるのは難しく、多くの場合はシステムエンジニアの対応が必要です。データ活用シーンの拡大に伴うIT部門の負荷を軽減させるために、システムエンジニアが独自のデータセットを追加するなど、ガバナンスの低下やノウハウの属人化といった課題も生じてきます。

DX時代のデータ活用において、システム面での課題について見解をお聞かせください。

藤生:近年、企業内の情報システムはオンプレミスだけでなくクラウドサービスなどで構成されているため、さまざまな場所にデータが散在しています。また、小さなサービスを組み合わせて利用するマイクロサービス化などの技術トレンドを踏まえると、今後さらにデータのサイロ化が進む可能性は高いです。データが分散した状態では、データを物理的に1カ所に集めるために大量のバッチ処理が必要になるなど、データの発生から利用までにかなりのタイムラグが生じることになります。またバッチ処理の本数が増えると、一晩で処理を完了できず業務に支障をきたすおそれがあるため、データ活用も限定的にならざるを得ません。

システム構築に際して、マルチベンダーに加え、IT部門においても基幹システム、人事システム、会計システムなどシステムごとに担当者が分かれているため、同じようなデータが複数部門で存在してしまう点も課題として挙げられます。全社でデータを活用する場合、どのデータを使うべきかがわからなくなることに加え、分析結果も変わってしまうリスクもあります。

データドリブン経営における業務システムは、業務の手順に着眼するPOA(Process Oriented Approach:プロセス中心アプローチ)ではなく、データを中心に考えるDOA(Data Oriented Approach:データ中心アプローチ)で設計することが重要です。

DX時代のデータ活用を実現するデータ仮想化では「データ品質」の維持管理が重要

DX時代のデータ活用統合基盤として、データ仮想化に着目した理由をお聞かせください。

藤生:大量で多種多様なデータのリアルタイム分析をいかに実現していくか。この難題に対し、DWHをはじめ従来型の物理的にデータを移動させる手法では、多くのコストと時間を要することに加え、IT部門の作業負荷が増大します。ブレークスルーとなったのが、システムのデータはそのままにデータを仮想化し統合する「データ仮想化」です。物理的にデータを移動させることで生じていた手間や時間がなくなるメリットは計り知れません。データ仮想化の革新性には大きく3つポイントがあります。

1.スピード:経営や業務部門が求めるリアルタイムでのデータ分析が可能となる
2.ボリューム&バリエーション:構造化データだけでなく、インサイトの源泉となり得る半/非構造化データも含め、大量かつ多種多様なデータ分析が可能となる
3.運用負荷の軽減:バッチ処理やデータ加工の軽減など、運用負荷の軽減が図れる。データ仮想化は、データ活用の質とスピードを飛躍的に高めることで、他社との競合に打ち勝つデータドリブン経営の実現に大きく貢献することができる

データを物理的に動かさないデータ仮想化の実装イメージ

データを物理的に動かさないデータ仮想化の実装イメージ

データ仮想化を導入するうえで留意点はありますか。

藤生:データ仮想化は、大量で多種多様なデータを利用可能にするため、データ管理の重要性は格段に高まります。データ管理といっても、データ項目やテーブルの一覧作成などシステム開発のための統制といったSIerのような観点とは異なります。データ活用を見据えて「データ品質」を維持管理することを意味します。データの更新はもとより、データのコピー利用や、複数部門で同様のデータ作成など、データの複雑化は分析結果の精度低下の要因となります。データ仮想化はデータを複製せず、元データを直接読みにいくことで、人的ミスの防止や一元的なデータ管理を可能にしますが、それだけでは不十分です。データの出自、品質に関する情報、メタ情報と呼ばれるデータの仕様や内容を定義付ける情報など、データ分析において重要な指標となるさまざまな情報を適切に維持管理していくことが必要です。データドリブン経営では、どのユーザが利用しても同一のデータを扱っているということが担保されていなければなりません。

Denodoはデータ仮想化が内包するデータ品質とセキュリティの課題を解決する

データ活用のプロフェッショナル、データ総研がデータ仮想化ソリューション「Denodo」を評価するポイントは何ですか。

藤生:仮想化し統合するだけでなく、その先のデータ活用を支える「データ品質」を維持管理するためのデータカタログなど、運用を見据えた機能を備えている点が「Denodo」の大きな特長です。データに関するさまざまな情報の一元管理を実現するデータカタログでは、構造化データに加え、半/非構造化データも管理対象に含まれます。データカタログによりユーザはプログラムを記述することなく人間の言葉でデータを検索できることに加え、「いつ誰がどこでどんなロジックで作成したか」などの情報を入手できるため、ノウハウの共有や利用データに関する説明責任を果たすことも可能です。

データカタログは、データ総研が提唱する「データは経営資源である」というコンセプトと、それを実現する手法としてのデータマネジメントと高い親和性があります。経営資源であるデータの品質を維持管理するために、当社のコンサルティングが作成した運用ルールや体制のもとで、「Denodo」は実際にデータカタログを利用することで運用が回っていきます。

ユーザ自らがデータを分析することで生じる課題はありますか。

藤生:データ分析が専門ではないユーザがデータを活用する場合、データの組み合わせによっては想定外の分析結果が出るリスクもあります。IT部門には、「このデータの品質はこういうレベルなので、この用途なら使える」といった、ユーザの活用を支援するサポートも求められます。データ仮想化によりユーザのデータ活用シーンが拡大する一方で、「誰にどのデータを開示していいのか、また誰に開示してはいけないのか」といった、セキュリティ面で新たな課題も生じます。Denodoは利用者一人ひとりにアクセス権限を細かく設定できるため、利便性とセキュリティの両方を実現できることも特筆すべきメリットです。さらにパフォーマンスも最適化されており、ユーザがストレスなく利用できることも大切なポイントとなります。

ユーザに対するアクセス権限により、Denodoは利便性とセキュリティの両方を実現する

ユーザに対するアクセス権限により、Denodoは利便性とセキュリティの両方を実現する

IT部門は業務部門とともにデータを活用することで新たな価値を創造

DX時代において、データ総研のコンサルティングが目指すデータ活用についてお聞かせください。

藤生:「DXを推進しデジタル時代を勝ち抜いていく」というお客様のゴールを実現するために、データを活用しリターンが得られる仕組みをつくり、さらにそのサイクルを回していく一連のマネジメントのコンサルティングに力を入れています。重要なのは、データ活用のサイクルを素早く回し、小さな成功体験を積み重ねることでデータマネジメントに対する認知を広げ、各企業の特性を活かしたデータ活用文化を創造し育てていくことです。

特定部門や部署を対象にスモールスタートで進める場合には留意点もあります。データ活用の一連のサイクルが単一組織内で完結している初期段階は問題ないのですが、全社レベルの取り組みになると、組織的にデータを管理するデータマネジメントが必要となります。企業内にデータマネジメントを定着させるためには、人材の育成や文化の醸成など長期的な視点と活動が欠かせないため、初期段階からコンサルタントの指導のもと計画的に進めることが肝要です。データ仮想化は、データ活用の一連の活動を下支えするデータマネジメントとセットになることで、リスクを回避しつつリターンの最大化が図れます。

DXを推進しデータ活用に取り組む企業にメッセージをお願いします。

藤生:「IT部門は、データ仮想化によって物理的なデータ基盤の構築に要していた手間や苦労から解放されます。DX時代のデータ活用はIT部門のプレゼンスを高めるのと同時に、その役割に変化をもたらします。これからのIT部門には、業務部門とともにデータを活用し業務改善や顧客満足度の向上、新たなビジネスモデルの創造など、企業の継続的成長に直接関わることが求められます。

データ活用の仕組みでは、Denodoを中核にして最終的にはお客様自身がデータ資産価値向上に向けて自走できることを目指します。当社と戦略的パートナーシップを結んだジールは、Denodoの取り扱いに加え、DWHやBIに豊富な実績とノウハウを有するソリューションベンダーです。当社のデータマネジメント力とジールのノウハウや技術力を融合し、お客様に合った「DX時代のデータ活用」の実現に貢献していきます。

データ総研が提案するDX時代のデータ活用を実現する仕組み

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